「母になる」第10話【最終回】 6月14日(水)放送

【第9話のあらすじ】

学校をサボった広(道枝駿佑)について家族会議が開かれた。それは里恵(風吹ジュン)が結衣(沢尻エリカ)の為に開いたものだった。

女子高生と花火大会に行く広。彼女のお陰で気持ちが軽くなった事、そしてこれまでの経緯を陽一(藤木直人)と結衣に話す。

東京を離れる麻子(小池栄子)を陽一と広は見送りに行き・・・。

 

今回の出演キャスト

結衣/沢尻エリカ

広の生みの親で、3歳まで広と暮らしていた。正直で、まっすぐな性格。いなくなった広の事をずっと想い、陽一と離婚後も一人働きながら1人でひっそり暮らしていたが、広が帰ってきた事により空白の9年間を一生懸命埋めようと努力する。

柏崎陽一/藤木直人

結衣の夫で、広の父親。大学の准教授だったが、広がいなくなった後、結衣とは離婚し引きこもっていた。しかし、広が帰ってきた事をきっかけに家族の絆を再認識し、家族再生へと家業の柏崎オートで働き始める。

柏崎広/道枝駿佑

結衣と陽一の子供。3歳の時に誘拐され、2年前から児童養護施設に預けられ、13歳の時に結衣と陽一の子供とわかり、一緒に暮らす様になる。生みの母親と育ての母親との間で揺れ動き、複雑な気持ちを抱えながらも明るく振る舞う。

門倉麻子/小池栄子

誘拐された広を発見し、その後7年間広を実の子の様に育てる。刑に服した過去がある。広が実の母親の所で暮らすと知り、思いを断ち切ろうとするが、なかなか断ち切れず苦悩する。

木野愁平/中島裕翔

児童相談所の児童福祉士。広が結衣と陽一の子供である事を調べ、以前の家族関係が取り戻せる様に相談に乗りながら尽力する。幼い頃友人を亡くした経験を持つ。

柏崎里恵/風吹ジュン

陽一の母で、柏崎オートの社長。広が帰ってきて再び家族での生活が始まった事を喜び、応援している。

緒野琴音/髙橋メアリージュン

家出後、里恵に拾われて柏崎オートで働いている。柏崎家を大切に思っていて、ずっと支えている。

西原莉沙子/板谷由香

広が誘拐された時も一緒だった結衣の友人で、ずっと結衣を見守り、支えている。ヘアメイクの仕事をしていて、仕事が大好きなあまり良い母親になれず、悩んでいる。

西原太治/浅野和之

大学教授で、陽一の元上司。莉沙子の夫。ずっと陽一達を心配し、面倒を見ている。家庭では莉沙子が母親らしくない事に不満を持ちながらも家族を大切にしている。

西原繭/藤澤遥

莉沙子と太治の子供。広とは幼稚園も学校も一緒の同級生。

「母になる」第10話【最終回】のネタバレ

高速バス乗り場に着いた結衣(沢尻エリカ)。しかし、麻子(小池栄子)の乗ったバスは出発してしまう。「門倉さん!麻子さん!」と呼びかけながら追いかけるが、追いつけない。

 

その夜、陽一(藤木直人)は縁側でビールを飲みながら、「お母さんって2人いちゃいけないのかな?」と広(道枝駿佑)に言われた事を考えていた。そこに結衣が広のマラソン大会に向けて買った靴を持ってくる。

陽一 「あ、これ買いに出かけてたのか。広と帰って来たらいなかったから。」

結衣 「あぁ。。。」

陽一 「どうしたのかなぁ、って。もしかしたら門倉さんを追いかけたんじゃないかなぁって。」

驚いた顔で陽一を一瞬見る結衣。

陽一 「違った?」

結衣 「あっ、そうだ!ちょっと待ってて。」

結衣は持って来た袋から小さな靴を取り出す。

結衣 「陽ちゃん覚えてるかなぁ。これね、ずっと大事にとってあったの。ほら見て。」

陽一 「うわ、懐かしい!」

結衣 「覚えてる?」

陽一 「覚えてるよー。初めての靴でしょ?」

結衣 「そう、ファーストシューズ。」

陽一 「こんなに小さかったかぁ。」

結衣 「可愛いねー。」

陽一 「可愛いね。」

そして、広の新しい靴と並べる。

陽一 「でかっ!」

結衣 「でかっ!」

結衣 「陽ちゃん、この頃の事覚えてる?」

陽一 「覚えてるよー。ほら、初めて歩いた日、大学に電話して来て、『陽ちゃん、大変大変!二歩歩いた!二歩!』って。何事かと思ったよ。離乳食も大人と同じものぱくぱく食べるようになってて、ちょうどこの頃だよ、あのー。」

結衣 「何?」

陽一 「いやいやいや、、、。」

結衣 「言って言って!」

陽一 「広が、一週間だっけ?ずっと便秘で、どうしよう、どうしようって。こんなに出ないの初めてなの。病氣なんじゃないかな。病院連れてった方がいいんじゃないかな、って。帰って来たら結衣が悶々と悩んでたろ?」

結衣 「あった、あった。そういうこと。」

陽一 「色々やったけど、なかなか出なくて。僕が疲れて先に寝ちゃったら、真夜中に『陽ちゃん、陽ちゃん』って起こされて、『出た!出たよ陽ちゃん。うんち出たー!』 って。」

結衣 「そうそう、『うんちうんち』って叫んだ。」と結衣は笑う。

陽一 「僕ね、広のこと可愛かった。もちろん可愛かったよ。でも、結衣の事も可愛かったんだよ。可愛い結衣ちゃんだったんだ。その可愛い結衣ちゃんがー」

結衣 「真夜中に『うんちうんち』叫んじゃったもんね。」

陽一 「あー、母親なんだなぁ、って。そういう日常の積み重ねがあって母親になっていくんだなぁって。こっちは置いてけぼりをくらったような、そんな気分で。大体、最初から10ヶ月出遅れてるし。」

結衣 「10ヶ月?」

陽一 「お腹の中で十月十日。女の人は先に子育てを始めてる。男は、ほら、産まれるまでなかなか実感持てないって言うでしょ。」

結衣 「あー、陽ちゃんもそうだったんだ。」

陽一 「赤ちゃんの時は特に、かなわないな、ていう事が多かった。結衣は自然に母親の顔になって、僕よりも先を歩いてた。」

結衣 「そう。そっか。そんな風に思ってたんだ。。。でも、花火大会!広の帰りが遅かった時、陽ちゃんしっかりと父親の顔だった。ビシッと叱りつけてくれたじゃない。」

陽一 「あれは、思わずー」

結衣 「思わず?」

陽一 「そう、思わず。」

結衣 「私も、思わず、、、門倉さんの事追いかけた。」

陽一 「あぁ、やっぱり追いかけたんだ。」

結衣 「木野さんが連絡をくれて、あの人が遠くに行く事を良かったですね、って言ったの。それを聞いて、本当にこれで良いのか、これで二度と会わなくて、おしまいにして、それでいいのか、思わず追いかけて、あの人に聞いてみたかった。本当に良いの?って。でも、間に合わなかった。」

陽一 「門倉さん、頭下げてたよ。君に伝えてくださいって。『どんなに償っても償いきれない事してしまった。本当に申し訳ありません。』と。それから、『広を産んでくれてありがとうございます。』とも言ってた。広にもお礼言ってたよ。『会いに来てくれてありがとう』って。」

結衣 「広は?」

陽一 「最後だからね、って。言ってた。」

結衣 「そう。」

陽一 「思ってたよりずっと、しっかりお別れしてたと思う。」

結衣 「私、すごい言い合いしたの。勝手な事言われて、私も言い返して。言いたい事言い合って、本音をぶつけ合った。あんな風に誰かとぶつかったのは初めて。いいよね?もう、いいんだよね?広がきちんとお別れしたんだし、あの人も新しい生活が始まるんだし。私も、もうあの人の事は、、、今は自分たちの生活を大切にしなきゃ、ね。」

陽一 「うん。」

結衣 「よーし、じゃこれに名前書こっかな。」

陽一 「えっ!名前はいいんじゃない?」

結衣 「持ち物には全部名前書かなきゃ。」

陽一 「いや、いくつだと思ってるの。嫌がるって。」

結衣 「えー?やっぱ書く。でっかく書く。」

陽一 「よしなって。書かなくていいって。」

翌日。広に新しい靴を渡す結衣。

広  「えっ?新しいの?やったー、ありがとう。」

結衣 「ここの所に書いといたから。」

広が靴を見ると、靴底に大きく『ガンバレ』という文字が。

広  「何これ!マジ?!何書いてんの?」

結衣 「書いちゃったー。」

広  「書いちゃったじゃないよー。ダサッ!」

結衣 「履いたら見えないから。」

広  「信じらんねぇ。」

靴袋に靴を入れる広。

結衣 「マラソン大会、みんなで応援行くからね。しっかり練習してよ!」

広  「みんなって?」

結衣 「ばあばや、琴音ちゃんや、、、モモちゃんも呼ぶ?来てくれるかなぁ?呼べば?」

広  「はいはい。行ってきまーす。」

結衣 「はいはい。行ってらっしゃい。」

 

神奈川県西児童相談所、談話室にいる木野(中島裕翔)。麻子から届いた手紙を読んでいる。

『木野さん、その後のこと少しご報告しておきます。私は新しい街で以前児相の所長にも勧められたカウンセリングを受けることにしました。あの子が私にお別れを言いに来てくれたこと、ママ頑張ってと言ってくれたことが私の背中を押しました。私は変わらなきゃ、その為には何を間違えたのか、過去の自分と向き合う必要があると思ったのです。カウンセリングでは、亡くなった母の話をしました。いびつな関係だったことを指摘され、私は反論しました。反論しながら、そうじゃない、母は私の為と言いながら、それはエゴだったんじゃないか、私を思い通りにしようとしていた母の言葉が呪いの様に私を縛り付けていたこと、加えて、誰にも本音をぶつけることなく、ひどく孤独だった自分を、ようやく、ようやく強く自覚しました。新しい仕事を覚え、働きながら、あの時私の世界がここにあるとあの子を抱きしめたのは私のエゴで、私は自分の孤独を埋める為にあの子と暮らしていたということ。私は母親なんかじゃなかった、そう思える様になりました。そして私が一生懸命子育てをしていたのは、亡くなった母に褒めてもらいたかった、そういう思いがあったのかもしれません。人は誰かに褒めてもらいたくて子育てをするわけじゃない。母になるってそういうことじゃない。でも、じゃぁ、どういうこと?どういうことだと思いますか?いつか誰かに聞いてみたい。母になるってどういうことですか・・・?』

結衣の家に莉沙子(板谷由香)が来ている。とても悩んでいる様子の莉沙子。

結衣  「ワールドツアー?!」

莉沙子 「うん。行っていいよって、平気平気って言われたんだけど、さすがに繭を置いて半年は長いなぁって、誘われたけど断ったの。そしたら、、、おめでとうって。言えない。断ったこと言えなかった。」

結衣  「それで言えないまま・・・」

莉沙子 「そう。言えないまま。」

結衣  「どうして?」

莉沙子 「どうしてって、ママの夢だったんでしょ?良かったね!ってあの笑顔で言われてごらんなさいよ。言えないわよ。せっかく私のことを応援してくれてる繭の気持ち踏みにじっちゃう気がして。繭のことさぁ、傷つけちゃう気がして。」

結衣  「だからってこのままじゃ。」

莉沙子 「うん。このままじゃ良くない。ごめんね、こんなつまんない悩みね。」

結衣  「えっ、つまんなくなんかないよ。繭ちゃんの気持ちを思ってどうするかってことでしょ。あっ、この際、思いきって、やっぱり行くってことにすれば?」

莉沙子 「あ、それね!私も考えなくもなかったんだけど、私の代わりなんかすぐ見つかっちゃたのよ。」

太治(浅野和之)と電話する繭(藤澤遥)。

太治 「で、そのニッコさんって誰?」

繭  「ニッコさんは今売り出し中のヘアメイクだよ。ツーオクのホームページ見たらニッコさんがワールドツアーのメンバーになってる。」

太治 「ああ、じゃぁその人と一緒に行くんだろ?あ、ちょっと待って。そのニッコさんって男か?女か?どっちだ?」

繭  「そうじゃなくて。私行ってくる!」

そう言い繭は電話を切る。

広  「どこ行くの?つーか、俺の携帯だし。」

繭  「待ってよ。探してんだから。」

広  「お前自分の携帯は?」

 

太治がもう一度繭の携帯に電話するが、繭の携帯は家のソファーの上で鳴っていた。

 

「ただいまー!」と広が家に帰ってくる。広と結衣のやり取りを微笑ましく見つめる莉沙子。

莉沙子 「自由参加のマラソン大会男子の部、出場するらしいじゃん。入賞目指してるんだって?」

広   「まぁ、一応。」

莉沙子 「自信の程はどうっすか?」

広   「バッチリ。」

結衣・莉沙子「本当?」

 

莉沙子の携帯が鳴る。繭が帰ってこないと太治からの電話だった。

莉沙子 「すぐ連絡くれれば良かったのに。」

太治  「だってワールドツアーの準備で忙しいかと思って。」

沈黙する莉沙子。そして正座して言う。

莉沙子 「ワールドツアーの準備どころか、私結衣ちゃんの家でゴロゴロしておりました。」

太治  「はぁ?」

莉沙子 「あのね、ごめんね、私—」

広   「あっ、ここに行ったのかも!さっき検索してたから。」

広が結衣と莉沙子に携帯を見せる。それは『MUSIC HOUR ENTERTAINMENT』のホームページだった。

MUSIC HOUR ENTERTAINMENTへ行く莉沙子と結衣と広。莉沙子が探しても繭の姿はなく、来た様子もなかった。「いたいた、こっちこっち」と広が言うので行ってみると、母をワールドツアーに連れて行って欲しいとマネージャーに直談判する繭の姿が。

思わず間に入って、謝る莉沙子。

繭   「ママ、お願いしなくていいの?私なら平気だよ、ママがいなくても。半年でも、1年でも2年でも、私は平気だから。ママがいなくても頑張るから。ママの為に頑張るから。だから行って来て。いいんだよ、ママはママの好きな仕事思いっきりやっていいんだよ。」

莉沙子 「うん。いいの繭。もういいんだよ。」

広   「あのさぁ、強がんなよ。」

結衣  「いいから。」

莉沙子 「繭。おいで。」

2人で泣きながら、繭を抱きしめる莉沙子。結衣と広は先にそっと帰る。

西原家にて。

太治  「つまり、ワールドツアーは?」

莉沙子 「お断りしました。」

太治  「母親業は?」

莉沙子 「やめません。」

太治  「俺が母になるって言う話は?」

莉沙子 「なかったことにしてください。」

太治  「母親に向いてないって。」

莉沙子 「そうはいったけど。」

太治  「ママ友との付き合いも。」

莉沙子 「うまくやれない。ダメ母だけど、それでもいいって繭が言ってくれたの。」

繭   「私にとって良いママであればそれでいい!」

太治  「そうか。」

繭   「それに本当のこと言うとパパじゃ嫌だった。」

太治  「えっ?!」

繭   「だって、ダサいし臭いしウザいんだもん。ごめん、お風呂入ってくる。」

リビングを出て行く繭。太治はショックを隠せない。

莉沙子 「思春期の女の子なんだもん、仕方がないわよ。男親には言えないことだってあるだろうし。失恋とかした話もね、本当はママに聞いて欲しかったって言われちゃった。」

太治  「で、仕事は?」

莉沙子 「仕事は、続けます!以前の様にセーブしながら。」

太治  「セーブしながら?」

莉沙子 「うん。私さぁ、仕事に復帰することにした時、決めたことがあるの。繭が高校卒業するまでは仕事セーブしようって。どんなに忙しくなっても優先順位は繭が一番って。だって、まだ繭がちっちゃかった頃さぁ、夜泣きがひどくて、なかなか泣き止まないあの子を抱いて、私がいつも何思ってたか、あなた知ってる?」

太治  「さぁ。」

莉沙子 「私ね、泣いてる繭を抱っこしながら、あー、早く大きくならないかなぁって。大きくなったら一緒にショッピングに行こうね。お化粧の仕方も教えなきゃ。男見る目も教えなきゃ。美味しいものも食べようね。未来の繭と過ごすあれこれ思い描きながら、苦手な育児乗り越えたの。あなたがね、私の代わりに母親やってくれてる間、あの頃のこと色々思い出してた。思い出しながら、あぁ、まだまだだなぁって。まだまだ私は母親として、人生の先輩として、繭に教えてあげなきゃいけないことたくさんある。一緒に楽しみたいこともいっぱいある。あの子に寄り添って成長を見届けなきゃなって。」

太治  「ずるいね。」

莉沙子 「ずるい?」

太治  「俺がお前の代わりに母親やってる間、母親っていつも側にいるから誰よりも子供の成長を感じられる。ずるいよなぁ。羨ましいよなぁ。いいなぁ、母親って。そう思ってた。でも、大変なことの方が多いんだろうけどさ。」

太治  「ちょっとこれ見て。繭が毎年母の日にママの絵を描いてたっていうから。」

太治はパソコンを見せる。

太治  「毎年描いた絵をパソコンに取り込んでみた。今年の分も入れてちょうど10枚。」

繭が描いた10年分のママの絵を2人は笑顔で見つめる。

 

一緒に歩く結衣と莉沙子。

結衣  「高校卒業まで?」

莉沙子 「そう。」

結衣  「でもその頃には今度は別の心配が出てくるんじゃない?結婚とか、就職とか。」

莉沙子 「そうなんだよね。母親に卒業ってないのかな。」

結衣  「母親に卒業は」

結衣・莉沙子「ないねー。」

莉沙子 「ずーっと子供の心配し続けるのかなぁ。」

結衣・莉沙子「いやだねー。」

そういいながらも2人は嬉しそう。

結衣  「ねぇ、繭ちゃんが描いたママの絵、私も見たい!」

莉沙子 「えっ、そんな他人の子供が描いた絵見たい?」

結衣  「繭ちゃんは他人じゃない。小さい頃からずっと見てきたんだもん。」

莉沙子 「そうか。そう言ってもらえると。繭の成長をさぁ、一緒に喜んでくれる人がいるっていうのは嬉しいね。」

 

家に帰った結衣は何か考え事をしている。そこに陽一が来る。

結衣 「あのね、やっぱり考えちゃう。あの人のこと。門倉さんのこと。忘れることが出来たらいいけど、そう簡単には忘れられない。そんな簡単なことじゃないから。モヤモヤした思いがうまく消化できずにいるの。」

陽一 「モヤモヤした思い?」

結衣 「憎しみ、怒り、嫌悪、許せない、許してたまるかっていう嫌な気持ち。そういう嫌な気持ちを抱えたままの自分が嫌になったっていうか、でも、どうしたらいいか。」

陽一 「門倉さんと別れた後、広が言ったんだ。『お母さんって2人いちゃいけないのかな。』って。」

結衣 「陽ちゃんはなんて答えたの?」

陽一 「何も。黙ってた。何て言えば良かったのかな。今も結衣に言うことじゃなかったのかもしれない。」

結衣 「ううん。話してくれてありがとう。」

 

マラソン大会のお便りを手に取る結衣。

 

旅館で働く麻子は、女将に呼ばれ、「あなたの過去のことを耳にした人たちが、あなたと働きたくないって言ってるのよ。」と言われる。「クビですか?」と聞くと、「一生懸命やってくれてるのに申し訳ないんだけど、ホント、力になれなくてゴメン。」と言われる。

荷物をまとめている麻子に女将はこれまでの分の給与と、届いた郵便物を渡す。

郵便の差出人は、柏崎オートだった。

急いで中を見ると、『マラソン大会のお知らせ』のお便りが入っていた。

 

広はモモと会い、マラソン大会見に来る?と誘うが、京都の大学に行っている彼氏が帰ってきていて会うから無理だと言われる。そして、ツーショットの写真も見せられる。

モモ 「お似合い?」

広  「ん、あぁー、すげーお似合い。へー、そっかぁ、良かったね。大学生のねー、彼氏かぁ。彼氏がいたのかぁ。」

広は動揺を隠せない。

モモ 「あ、昔飼ってた犬の写真もあるよ。そっくり!広ちゃんにそっくり!」

広  「あー、本当だー。そっくりー。」

と、広は棒読みの様に言う。

家に帰った広はすぐ自分の部屋に行くと布団を出し、枕を投げ、「あーーー!!」と言って荒れている。

驚いて部屋に駆けつける結衣が「何があったの?」と聞くと広は「何もございません。」

と言い、すぐにドアを閉める。そして布団にくるまる。部屋に入る結衣。

結衣 「夕ご飯は明日のマラソン大会に向けてカツ丼だよ。みんなで応援に行くからね。」

広  「もう!うっさいなぁ。来ないでよ応援なんか。誰も来ないで!誰も呼ばないで!絶対絶対絶対絶対来ないで!絶対来るな。来たら出ないから。寝る!」

 

その夜、柏崎家に皆集合する。

木野  「すみません、遅れて。仕事で。」

里恵(風吹ジュン)は「シー!」と言い、無言で二階を指差す。

木野  「あっ、広くん抜きですか?」

結   「すみません、急に。」

木野  「緊急家族会議って?」

莉沙子 「私が招集掛けました。明日のマラソン大会について。」

太治  「リサーチしました。ママ友によると、保護者見に行かない様です。」

陽一  「えっ?誰も?」

太治  「自由参加だから、誰もってことはないだろうけど、男子の大会は基本誰も行かないみたい。」

莉沙子 「繭にも確認したんだけどね、ポンポン持って応援は行かないらしいよ。」

結衣は手作りの黄色いポンポンを見せる。

陽一  「いつの間にそんなの作った?」

結衣  「だってー。」

木野  「あのー。これは?」

莉沙子 「誰も来ないでって、広君が急に反乱を起こしたらしいの。」

従業員 「あれじゃないですか?第一次反抗期。」

里恵  「陽一もね、反抗期あったわよね。」

太治  「成長過程において必要!ない方がおかしい。」

莉沙子 「うちなんかさ、ダサいしウザいし臭いしって。」

琴音  「それわかる。すっごいわかる。」

莉沙子 「ということで皆様、明日の応援は行かないっていう事で。」

里恵  「そうね。じゃ、結衣ちゃんあんまり気にしないで。」

太治  「ま、そういうことで。では、これで解散。」

 

皆が帰った後、木野だけ残り結衣と陽一と話す。

陽一  「なう先輩?」

木野  「覚えています?調理師を目指すって頑張っているんですよ。」

結衣  「木野さん、私マラソン大会のお知らせを送ってしまいました。」

木野  「はい?」

結衣  「住所を調べて、門倉さんに。」

陽一  「えっ?」

木野  「何やってるんですか。二度と会わないんじゃなかったんですか。何を考えてるんですか。」

思わず声が大きくなってしまう木野。

木野  「どういうつもりですか。」

陽一  「広が言ったからだろ。」

結衣  「それもあるけど。」

木野  「広君が何て言ったんですか?門倉さんに会いたいって?」

陽一  「いや、『お母さんって2人いちゃいけないのかな』って。」

木野  「えっ、広君がそんなことを。」

結衣  「木野さんはどう思いますか。」

木野  「僕は、、、ケースバイケースだと思います。実際に産みの親とと育ての親と、母親が2人いることを嬉しそうに、誇らしげに話す子供もいます。それで上手くいっているご家庭もあります。でも、広君が言った2人っていうのは門倉さんと結衣さんのことですよね?僕には考えられない。きれい事で収まる話ではないと思います。結衣さんはもっと自信を持つべきです。」

結衣  「自信?」

木野  「生意気なこと言わせてもらうと、会わないと決めたのに、マラソン大会のお知らせを送ったり、広君の言葉に揺れてしまったり、やってることが迷走してしまうのは結衣さんに自信がないからじゃないですか?僕はわりと保守的で、3歳までにたっぷりと愛情を受けた子供は大丈夫だって考えなんです。広君を見ていてもそう思います。今も思っています。広君、すっごく理不尽な状況に置かれたのによく心が歪まなかったなぁって。それは広君が3歳までに母親からたっぷりと愛情を受けて育ったからだよなって。」

涙する結衣。

木野  「自信を持ってください。負けないでください。母親は結衣さんです。」

マラソン大会当日。結衣が書いた靴底のメッセージを見て靴を履く広。スタートするが、わざと転ばされる広。

結衣は家で掃除機をかけている。時間を気にしつつも掃除を続ける。

広はしんどそうだが走り続ける。

その頃、麻子はマラソン大会のお知らせを持って向かっていた。

広の前で、スタートの時に広を転ばせた生徒が倒れる。広は一度はそのまま追い抜くが、引き返して助け、足を怪我している彼に肩を貸しながら一緒に歩く。

麻子がゴールのグランドに着くと、ちょうど広が友達に肩を貸しながら入ってきた。そしてその前には「広!頑張れー!」と大きく手を振り応援する結衣の姿があった。

友達 「何あれ、お前の母ちゃん?」

広  「来んなって言ったのに!」

友達 「綺麗だな、お前の母ちゃん。」

広  「何言ってんだよ。重いんだよ。走れよ。」

友達 「走れねえよ。」

広  「先に行け!いいから先に行け。」

広がゴールすると、「やったぁ。」と安堵し、広の所に駆け寄る結衣。麻子もにこやかに遠くから見つめる。

ヘトヘトで座り込んでいる広にタオルを渡す結衣。

結衣 「はい。大丈夫?お友達保健室行っちゃったけど。」

広  「友達じゃねーし。スッゲー嫌なやつ。めちゃくちゃ腹立つ。むかつくやつ。」

結衣 「でも、肩貸してあげたのに。」

広  「それとこれとは別。倒れてるの放っとけないだろ。」

結衣 「そっか。」と微笑む結衣。

広  「お母さんも来んなって言ったのにさぁ。」

結衣 「まぁまぁまぁ、お母さんも放っとけなくってさ。」

手を差し出す結衣。その手を取り、広は立ち上がる。

広  「しょうがねぇなぁ。」

結衣 「しょうがないなぁ。」

笑い合う2人。その時、広が麻子に気付く。そして歩み寄る。

広  「来てたんだ。見てたの?」

麻子 「頑張ってたね。」

広  「まあね。ていうか何で?」

と、結衣に聞く。

結衣 「広の応援に来てくれたんでしょ。」

広  「そうだけど、何で?」

結衣 「何でって。」

広  「まあいいけど、あっ、俺、教室に戻んなきゃ。」

結衣 「うん。じゃぁ、お母さん先帰るね。」

「じゃ。」と結衣に言い、広は教室に戻って行く。が、振り向いて麻子に向かって「じゃ!」と手を挙げる。

麻子 「私、結衣さんに会いにきたんです。マラソン大会のお知らせ送ってくれたのは結衣さんですよね。どうして?」

 

川沿いを歩く結衣と麻子。

結衣 「新しい生活はどうですか?旅館の仕事。仲居さん?」

麻子 「いえ、裏方です。」

結衣 「慣れました?」

麻子 「いえ、まだ。」

結衣 「忙しいですか?」

麻子 「朝起きて、空を見上げる癖がつきました。向こうの天気は変わりやすいんです。晴れていると思ってもいきなり雨が降り出したり、弁当忘れても傘忘れるなっていう言葉があるくらい。」

結衣 「へぇー。」

麻子 「あの、お知らせを送って頂いてありがとうございました。正直驚きました。」

結衣 「あなたを許したわけではありません。許せるわけありません。ただ、誰かを憎みながらこの先ずっと生きてくのかと思うと、ゾッとします。モヤモヤした思いを抱えながら子育てをしても楽しくありません。だからいつか私はあなたを許さなきゃいけない、そう思っています。木野さんに自信を持つ様に言われました。そうだなぁ、って思いました。私はまだ母になる途中なんです。いつか、いつかあなたに何を言われても、何を聞かれてもびくともしないで笑っていられるような母になりたい。例えばあの子に『お母さんって2人いちゃいけないのかな』って言われても、『そうだね。それも楽しいね。いいよ。2人いてもお母さん全然いいよ。楽しいね。』そう笑って言える母になりたい。なぜならそれが広の幸せに繋がることだから。あなたを許す時が、許せる時が来たら、広を連れて会いに行きます。奥能登でしたよね。小さな旅館で頑張って働いているあなたの所に、いつかきっと。」

麻子 「その時は傘を忘れないでくださいね。お天気が変わりやすいから。」

結衣 「弁当忘れても傘忘れるな。」

結衣はお辞儀をし、その場を離れる。が、途中で足を止め、振り返る。

結衣 「一つだけ。一つだけ、あなたにお礼を言うとしたら、何でもない日常がどんなに幸せか、母になることがどんなことか、考えもしなかった。おはよう、行ってらっしゃい、行ってきます、ただいま、おかえり、おやすみ、そういう言葉を言える相手がいることがどんなに幸せなことか、あなたに奪われた9年間がなければ気付かなかった。ありがとう。」

麻子は目に涙を溜め、無言で首を振る。

結衣 「あの子を育ててくれて、ありがとう。」

麻子は涙を流す。そして帰っていく結衣に頭を下げる。

 

柏崎家で線香花火をする広、里恵、琴音。

 

「明日出すからここにサインして。」と陽一は里恵に婚姻届を渡す。

 

西原家では朝からしっかりと母親業をする莉沙子。

 

上牧家のお墓の前で手を合わせる木野。墓石には『寛太郎』の名が刻まれている。

 

なう先輩と話していた広はお墓参りが終わった木野を見つけると駆け寄る。

なう先輩 「木野さん、寛ちゃんの命日ですか?」

木野   「ああ。」

広    「110円は?」

木野   「持ってるけど。」

なう先輩 「そうやって持ってたらいつまでも過去に縛られちゃうって感じしないですか?」

木野   「あぁ。」

なう先輩 「だから彼女出来ないんですよ。飲みましょう!」

広    「飲みましょう!」

木野   「えっ?」

 

木野は110円を取り出す。広となう先輩はそれぞれ10円ずつ木野に手渡す。木野はそれでジュースを買う。

座ってジュースを飲む3人。

広    「俺ね、ふくしゅうすんの。」

なう先輩 「俺も。」

木野   「ふくしゅう?ふくしゅうって予習復習の復習じゃなくて?」

広・なう先輩 「復讐の復讐」

なう先輩 「俺は、俺を放置してる母親に。」

広    「俺は3歳の頃の俺を誘拐して勝手に死んじゃったなんとかっていう人に。」

広・なう先輩 「復讐してやるのだー!!」

2人とも笑顔で言う。

木野   「えっ?どういうこと?ちょっと。」

広    「誰よりも幸せになるってこと。」

なう先輩 「そう。それが俺たちの復讐!」

安堵し、笑顔になる木野。

 

料理をする結衣。

「母親に卒業はないけどね、家族にはあるって知ってる?繭ちゃんのパパが言ってたよ。母親の手から離れた子供がやがて家を出て行く時、それが家族の卒業。ゴールだって。聞いてる?ねぇ!」

振り向くと縁側で同じ体勢で同じ顔をして寝ている広と陽一。結衣はそんな2人を笑顔で見つめ、「コラー!!ほら起きて起きて!」と大声で言うと驚いて起きる2人。

広  「あ、お父さん寝ちゃった!」

陽一 「本当だ。」

結衣 「こんな所で寝てると風邪ひくでしょう!」

 

柏崎家の表札には『柏崎 陽一 結衣 広』の文字が。

 

【完】

 

管理人の感想

結衣も麻子も広を思う気持ちは変わらない。母親の愛の深さ、そして母になること母でいることの難しさ、葛藤、色々なことを感じさせられるドラマでした。途中ちょっとグチャグチャ色々盛り込みすぎた感はありましたが、何と言っても沢尻エリカと小池栄子の演技力の高さがこの難しいテーマのドラマを引っ張っていたと思います!もし続編があったら、また見てみたいです。

 

後からでも見れる動画メディア紹介

http://cu.ntv.co.jp/haha_10/

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